-Inception-
創世期
ゼーゲンヴェルト創世記
第一章 祝福の地の創造
出典:アルヒェ教団正典管理部
むかしむかし、まだ世界が創られる前のお話です。
そこには、創造者・アーカーシャしかいませんでした。
光も闇も無い虚空の中で、アーカーシャは自分の姿に似せた「人間」を創りだし、その世界の行く末を見守ろうと考えました。
アーカーシャは、初めに一冊の本を創りだしました。その世界の一生を、その本に記すためにです。
アーカーシャは、初めにその本に大地を記しました。
無限に広がる空を記し、果てしなく深い海を記しました。
それらは、その記述をなぞる様に次々と誕生しました。
私たちの住まう祝福の大地「ゼーゲンヴェルト」の誕生です。
そしてアーカーシャは、人間の誕生を記しました。命に限りを与え、その中で輝くようにと記しました。
最後にアーカーシャは、「名前」を記しました。
全てのモノに真の名前を与えたのです。
人それぞれに、草に、風に、水に、その名を与えました。
自分が自分でいられるようにという、
アーカーシャの心からの願いと祝福を込めて。
ゼーゲンヴェルト誕生記
第二章 原初の人間
出典:アルヒェ教団正典管理部
ゼーゲンヴェルトと人間たちは、忽ちに進化し発展を遂げました。
人々は大地を耕し、山を駆け、海を渡りました。
そうして人々は世界中に広まり、独自の文化を築き
様々な手段で世界を精一杯に生きていました。
怒りも、憎しみも、殺しも無い平穏な世界で、
全ての人々は幸福な生を得ていました。
これこそが、原初の人間の姿だったのです。
そしてそのまま、何年、何十年、何千年と
ゼーゲンヴェルトと人々は、変わらずに生きるはずでした。
安寧そのものの世界で。
しかし、その平穏は、一人の人間によって
全てかき消されてしまうのです。
人でありながら、嘗ての人とは全く異なる性質を持った、
アーカーシャの年代記に刻まれた原初の異端者、
によって
ゼーゲンヴェルト誕生記
第三章 最初の罪人
出典:アルヒェ教団正典管理部
※この文書は秘匿事項であり、また教会の信教を妨げる内容である可能性を孕む為、大司教以下の称号の閲覧、
及び本書を書庫外へ持ち出す事をを堅く禁ずる
人々はアーカーシャの庇護下で、争う事も無く、殺し合う事も無く、
唯々平穏に暮らし続けていました。多くの命が生まれ、命の限り生き、
死んでゆきました。ゼーゲンヴェルトのあるべき姿だったからです。
しかし或る時、そのあるべき姿は壊される事になるのです。
その年、名も無い小さな村に、小さな小さな赤ん坊が生まれました。
その赤ん坊は、真の名前を といいました。
その子供は、普通とは少し違っていました。
狡猾で、卑怯で、惨忍だったのです。
その感情は、ゼーゲンヴェルトの人間に理解しがたく、
しかし新たな感情を与える事になったのです。
ある年、 は一人の人間を殺しました。
その出来事は、人間に憎しみという感情を新たに刻み込みました。
それはアーカーシャが書に記さなかった事でした。
アーカーシャの意志に反する出来事が起こったのです。
人々は、只ならぬ事態だとようやく理解しました。
そして、 をゼーゲンヴェルトから
始末してしまおうと考えました。
によって、人々は争いの戦火を
ゼーゲンヴェルトに落とす事になったのです。
狡猾な はそれに怒り、
己を認めない世界を屈服させる事を画策しました。
そして彼は、アーカーシャが創世の時に創りだした全知全能の本、
「アーカーシャの年代記」を手にしてしまうのです。